読み進むにつれて、主人公・林太郎の祖父の古本屋が続いてほしい、という願いが強まってくる。
本を救うため林太郎を起用したのが
古本屋の奥の壁から現れた猫なのは、古本屋のイメージと猫の人気度からして無理もない!
本を害していた3種類の人々は、もともとは本を愛していた人々だった。
愛したがゆえに、本があり続けるためにどうしたらいいか考えるうち、それぞれの邪道に陥ったのだ。
聞いてみるとそれぞれもっともな理由だ。
読み応えのある本は、長くて読むのが苦しくて、内容だけ知れるならそれでいいと思いがちだ。心を揺さぶられるのは、億劫だ。
けど、感動を味わうのは当然ある程度の長さの本でなければ。
出版社が売れる本だけ売っていたらどうなるだろう?
手軽なもの、安価なもの、刺激的なもの、そういう読み手たちの求めるものに本は姿を変えていく。
一方、大切にされた本には心が宿り、そして心を持った本は、その持ち主に危機が訪れたとき必ず駆けつけて力になる。
林太郎は、本の力って何なのか、ずっと考えてきたという。
そして、思い当たる。
古本屋を営む祖父を突然亡くした高校生の林太郎と
学級委員長の柚木さん、トラネコ、迷宮の人々、それぞれの行き方で本と関わる。やっぱり本は人を不思議な世界へ導く架け橋なんだな。