ともに絵を描くことが好きで得意な二人の少年、岡本と志村。
一緒に写生をしたことをきっかけにほんとうの友だちとなって
中学校に進んでも寄宿舎でともに過ごしていた。
しかし、志村は事情あって故郷の村へ帰り、
岡本は東京へ遊学。
数年たって岡本が故郷へ帰ってみると・・
ごく短い話なのですが、読む者にしみじみとした感慨を残します。
年月の流れとともに、止むことなく移ってゆく人の存在と
あの日と変わらぬ日の光を浴びる山河。
この対照がいつも人の心を動かしてきたと思います。
考えてみれば映画やドラマなどでも、
「ああ、あの人がここで笑って立っていたっけ」
「ここを毎日通ったけど、もう通ることもないんだ」
という感動が作品に深みを与えることって多いようです。
泣かされるのもそういう場面。
「画の悲しみ」を読んで思い出したけど、
本を読んでいて
「思わず読み返したくなるフレーズ」ってありますね。
もう一度味わわずにはいられない部分。
この作品の最後のところはまさにそれでした。