いま、タンポポ界はどれが主流? なぜ? 『わたしのタンポポ研究』

セイヨウタンポポが来て100年

日本にセイヨウタンポポが来たのは、
サラダ用野菜として北海道に持ち込まれたのが始まりのようです。
1904年の植物学専門誌に牧野富太郎博士によって報告されているそうです。
日本中に広がっていくだろうという博士の予想がずばり的中して
セイヨウタンポポが日本タンポポを駆逐していくかに思われていました。
実際そのようなニュースがまことしやかに流された時期もありました。

けれども、自然界はそんなに単純ではなかったようです。
静岡県で奇妙なタンポポに気づいた人がいたのです。
そのタンポポは姿かたちはセイヨウタンポポそっくりなのに、
様子が異なっていました。
遺伝的な実験をしながら詳しく調べていた研究者によって、
その奇妙なタンポポが雑種タンポポであることがつきとめられました。
1988年のことです。

「緑の国勢調査」で明らかになったこと

2001年、全国で見た目がセイヨウタンポポらしいものを集めて調べた結果、
そのうち85パーセントほどが雑種タンポポ、
残りの15パーセントがセイヨウタンポポでした。

たねの運ばれ方いろいろ

小学校2年生の教科書にすでに出てくるように、
タンポポのたねが遠くへ運ばれる様子は日本人の多くが知っています。
そういう知恵を使って広がり生き抜いてきた日本タンポポが減って
雑種タンポポが増えてきた秘密は、
どうやら暑さに関係があったようです。
その事情が本書に書かれています。
グラフもあってよくわかります。

みんなで暮らす日本タンポポと 一個体で暮らせる雑種タンポポ

そして、なんとセイヨウタンポポや雑種タンポポは、
たった一個体で種子をつくれるそうです。
だから、街中でコンクリートのすき間に一株だけ生えても生きていけるんです。
都市生活にマッチした、
群生できなくても暑くても平気な種類が数を増やしてきたというわけです。

それでもまだまだ残る謎

そうだったのか、なるほど、と解明されたことも多いとはいえ、
まだまだわからない部分が残っているのが
タンポポの不思議で奥深いところ。
タンポポの寿命って何年ぐらい?
ある場所に根づいたタンポポは何年ぐらいそこで生きているのか?
また、冬に咲いているタンポポを見かけるが
どのようなメカニズムでそうなるのか?
など、正確にわかっていないそうです。

英語で「ダンデライオン」と言うタンポポ。
葉がライオンの歯のようだからというのが一般的な説のようです。

身近で特徴満載なタンポポは
人間のそばにあってその生活環境を映しながら
身を守り変化しながら生きている植物なんだという思いを深くする本です。

こういう説明文的な本は、
手に取るまでが敷居が高いのですが、
読んでみると「読んでよかった」
と思えることがほとんどです。
この本も、一般の人にわかりやすくイラストや図表入りで書かれているので
スムーズに楽しく読むことができました。
イラスト、ほのぼのタッチでかわいい!
小学校高学年から読めます。

心で見る人が増えるといいな

オーガスト・プルマン。顔に障害がある男の子。

見かけがちょっとでも変わってると、とやかく言ってまず排除する、
っていうことが世の中多い。
もっとうがって考えると、
変わってなくても、新しく入ってきたものはまず排除、
っていうこと(人)が多いかも。

気分がネガティブになっているときは、
そういう思考回路になって、世の中がいやになったりする。
けど、そうじゃない人たちもほんとうは少なくない・・

その一人、オーガストのママ。

「いつどこにでも意地悪な人っているのよ。
でも、いい人がお互いに見守ったり助けあったりしているの。」

こう思って毎日を送りたいもんです。

学校でほとんどの子が彼を汚いもの扱いするなか、
そんな子たちの気が知れない、
っていう感覚を持ち続けられる子がいる。
サマーという女の子。
この子が突破口になったことが大きかったのだと思う。

動物の純真さ、人間に与える安らぎも描かれていました。
オーガストの家のデイジーは、ホームレスから20ドルで買った犬。
家族で心からかわいがっています。
犬と人間が互いに、与え、与えられている感じです。

最初の100ページくらいまで、
それほどおもしろく感じないまま読んでいるうち、
そのあと、はいり込んでいきました。

『二日月』も、きょうだいがしょうがいを持っているお話で
この『ワンダー』と共通な部分があります。
障害を持つきょうだいをみんなに見られたくない、と心のどこかで思う気持ちも描かれています。
丘修三『ぼくのお姉さん』というお話も思い出しました。