「ぼくもがんばるよ」と心の中で話しかけるようになるまで 『夏の庭』

「夏の庭」とは、
ある一人ぐらしのおじいさんの家の庭。
コスモスがいっぱい咲いた庭。

コスモスのたねが、ぱーっとたくさんまかれたのには
たくさんの事情が折り重なっていたし、
コスモスが咲くかたわらで起こったことも
人の一生のうちで何回もあることじゃない。

6年生男子3人。
古い小さな木造の家に住むおじいさんと知り合う。
その動機は、なんとなくやましい・・・
けど、おじいさんとつきあって少しずつ会話をするうちに
6年生なりにわかっていく。
人生では
「Aさんの家にはりんごがひとつありました。
Bさんの家にはりんごがふたつありました。
両方合わせて3つです、ってわけにはいかない。」
ってことが。

死ぬって、もうその体でぼくと話したり、
いっしょにものを食べたりすることは絶対ないってことだと感じる。

老人には(老人とまでいかなくても)、たくさんの歴史があるのだ。
そうしてやがて、歴史とともにあっちの世へと行くのだ。

残されたぼくたちは、
おじいさんが一人でぶどうを洗っている後ろ姿を想像する。
思い出すのは、そういう日常のなにげない姿だ。
そこにこそ、その人のぬくもりがある。

彼らは、
「ぼくもがんばるよ。」
と心の中でおじいさんに話しかける。

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