出会った人みんなが声をかけいたわって 『こんぴら狗』

戌年なので、年頭に「おかげ犬」が出てくる歌を
NHK Eテレ 「0655」 でやっていました。
ポチが通ります
主人の代わりにお伊勢参りに行く「おかげ犬」は
浮世絵にも描きこまれています。

いったいどうやって??
と思うとき、
「おかげ犬だ」と知って、道行く人が導いてやったり
えさをやったりしていただろうことを想像します。

江戸時代の人たち、いい人たちです・・・

「こんぴら狗」っていうのもいたんですねえ~
江戸からだと、金毘羅さまは伊勢よりずっと遠いじゃないですか!

 

四国の金毘羅さままで歩いて行くのは
江戸の線香問屋、郁香堂の飼い犬ムツキです。
生まれたばかりで死にそうになっていた子犬のムツキを
助けてくれたのが郁香堂の娘・弥生。

その弥生が病気で伏せるようになったのを
なんとか治るように願をかけるため
知り合いのご隠居といっしょに金毘羅さまに参ることになるのです。

みちみちどこでも、こんぴら狗と知ると歓迎してくれて
かわいがり励ましてくれるというふうでした。

けれども、早くも第5章の見出しは
「別れ」とある。
いったいだれがだれと別れるの~?
どんな形で??
このあたりから、もう読むのがやめられなくなりますね。

出会う人で、少なからぬ縁を結ぶ人びとは
それぞれが楽しいことばかりじゃない過去を持っていて。

船頭の少年すら、どうすることもできない理由で
生まれた土地を追われた。
3人連れの女の1人はまだ若い娘で、
芸者に売られたがそれを恨むこともできない身の上。
門付けの若い瞽女は
「ほんまにぬくいな。あたしは犬が好きや。」
と見えない目で空を見上げて
ムツキをなでては声に出さずに笑っている。

茶店でだれかが「こんぴら狗や。」と言うと
みんなが振り返ってそばへやってきて
首にかけた木の札をさわったり頭をなでたりする。
そういう、場の空気があたたかく伝わってくるのが心地いい。

長旅を耐えている犬のけなげさに心をうたれるのは
登場人物も読者も同じ気持ちのようだ。

金毘羅さまに着いていよいよお参りするときに
一緒だった娘の言葉に胸を打たれる。
自分も決して幸多い日々ではないにもかかわらず
犬のため、病気だという見知らぬその飼い主のために
涙を流して祈っている姿と言葉に。

ムツキがお参りを果たしたあと、どんな帰途をたどるのか
見届けるまでは読むのをやめられないでしょう。

この物語を小学校高学年の課題図書にしたのは、
見知らぬ人どうしが無言のうちに
善意や信頼でつながりあい助け合うことは
可能なんだよ~~!
っていう意味なんじゃないかと思います。

犬好きの人、歴史好きの人には
とくにおすすめだよ~!
って勧めてみよう。

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