さびしくても友だちを見送れる? 『ねずみ女房』

バーバラ・ウィルキンソンというご婦人の家にすむ、めすねずみ。

ある日、森でつかまえられて家にやってきた きじばとと
話すようになる。
外の世界にある 丘のこと、麦畑のこと、雲のこと。
見たことのないもののことを聞いて
それを想像するようになる。

けれども、はとは、用意される豆もあぶらみも食べずに
やせ細っていきます。
めすねずみは、何かわからないけど、
はとを外の世界に帰してやらなければならない気がした。
めすねずみの目には、はとのために流した涙のあとがあった。

ねずみ流にしか考えられないけど、はとの気持ちは想像できました。
そして決心しました。
はとが入れられているかごのとめ金に、歯でぶら下がって
戸を開けてやろうと。

歯がちぎれそうになるまでぶら下がっていると、
はとは、気付いてかごを出て、やがて窓の外へ飛んでいった。

めすねずみはその後、目をまわして下に落ちて
はとが飛んでいくのを見ると、
起き上がってからだをゆすり、毛についたごみをはらいました。

もう、窓の外の世界の話をしてくれる者はありませんでした。
それがわかっていても、戸をあけて見送ったのです。
めすねずみの目には涙がやどっていました。
そして窓の外を見ると、星が見えました。

あの星も、わたしに見えないほど遠くはないということだ、と
めすねずみは言いました。

この本をもっと手に取られるようにしたいが、どうしたらいいかな。
もちろん、極力、紹介するのがいちばん必要なんだけど。
表紙の絵の場面をアピールするのも良いだろう。
石井桃子さんの訳が本当にあたたかく全編を貫いているのを感じる。
一方で、「女房」ということばが、なんだか疎遠な感じになっているのがちょっと気にはなる。

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