インターネットで人探し、って今ではふつうのこと。
テスもそれをやってみた。
探し当てたのは、おとうさん。
そしてやってきたのは、驚くような変わった人ではなく、
ふつうにジーパンとTシャツを着たやさしい声の男の人。
オランダの観光地・テッセル島に家族で滞在していた
男の子サミュエルが、島に住むひとつ年上の女の子テスの
おとうさんとの出会いの7日間に
居合わせ、巻き込まれ、重要な役割を果たしていく。
テスは自分のことを「ヘンなことが好きな子」と言う。
だけど、みんながしたがらないことをするのが
いつも「ヘン」とはかぎらない。
たとえば、近くのおじいさんがかわいがっていたカナリヤが
死んだとき、いっしょにおそうしきをしてあげることとか。
サミュエルは、死んだカナリヤを
だまって見つめるおじいさんの姿を見て
今もレムス(カナリヤの名前)が好きなんだなあ
と思う子。
テスは、そういうサミュエルといっしょに
おそうしきをしてあげる子。
おじいさんの家には動物の写真がいっぱい貼ってある。
1枚はゴリラとウサギの写真。
ゴリラがひとりぼっちになったとき、
飼育員がウサギをペットとして与えたら
えさも分けあって食べるようになった2匹。
「だからわしはまだ生きてるんだ・・」
とヘンドリックさん(おじいさんの名前)は言う。
テスが生まれて初めておとうさんと会うストーリーの間に流れる
こういう挿話が、
登場人物や話を温かいものにしていると思う。
その温かさが自分に知らず知らずにしみこんでいたのを
読み終わったときに感じます。
絵は『ミリーのすてきなぼうし』のきたむらさとしさんでした。