12歳の子は大人より純粋な大人だ 『ミスターオレンジ』

ライナス・グレゴリウス・ミュラー。
一番上の兄が18歳で戦争に行き、次の兄シモンがやっていた配達の仕事を引き継ぐ。ライナスの家は八百屋なのだ。

ライナスは、戦争が何かは知らないが、兄は、自分のしたいことができる未来のために戦いに行ったのだと考える。

オレンジの配達で訪れる家の画家は、戦争が始まった後、ヨーロッパからアメリカに来たという。戦争が終われば世界中が変わると信じて。
戦争は自由な想像力を許さず、兄の友人をはじめたくさんの人の命を奪う。

手紙で登場する兄、父母、画家、絵が好きな兄が作った漫画のキャラクター・ミスタースーパー、友人・・・。戦争が影を落とすニューヨークの街で毎日を暮らすライナスの考える内容は、非常時であるだけ、半分大人であるだけ、とても純粋で、そして、まっとうだ。

読者は我が身を振り返ったり心洗われたりする。

例えばこのような言葉。
今、自分がしていることは、自分の役には立たないかもしれない。ずっと未来に役に立つことのために働くこともある。

ちなみに、ミスターオレンジは、オランダ生まれの画家ピート・モンドリアンのことだという。

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