今の東京から昔の東京の痕跡を辿って
謎を解いていく歴史ミステリーでもあり、
同時に
早稲田にある下宿屋の住人たちが
それぞれの悩みと向き合う
ハートウォーミングストーリーでもある。
だめだって思ってると、ほんとにだめになっていっちゃう
って、気付かせてくれる。
12歳から70歳代の人びとが
知らず知らず、自然と互いを助けている。
冬至から正月3日までの短い期間の話だったってことに読後に気付く。
早稲田の穴八幡あたりに建つ下宿屋「九月館」。
ある日、管理人のすずさん(70代)の知り合いという1人の男性が訪ねてくる。
彼はまだ若いのに、なぜかすずさんが幼いときのことを覚えている。
九月館が建ったころそこに生えていたケヤキの木のことを
なぜか知りたがっている。
その根元に埋まっていた不思議な石を探しているかららしい。
古い地図や古文書を手がかりに
彼が言う不思議な石探しに着手する九月館の住人たち。
元は早稲田にあった寺が別の場所に移っていたり
手がかりとなる古い本を探しているもう一人の人とぶつかったり
石に辿り着くことはできるのか?
ケヤキの木のことを知りたがって訪ねてきた男の正体は?
ハートウォーミングなストーリーであることは確かなのに
歴史ミステリーとして確固たる謎解きを迫る展開です。
歴史好き、友情もの好き、ミステリー好き・・・
いろんなジャンル、いろんな年代をカバーするストーリーです。
福音館創作童話シリーズ。
現実でもありえて想像でもありえる「童話」で
謎解きの側面・夢の側面とも、大人にも読み応えあります。