大きな字で読みやすい、小学校中学年から読めるおはなしです。
広島の原爆資料館に展示されている、
中身がまっ黒になったおべんとう箱。
その朝、おべんとう箱に、
大豆と麦と米のまぜごはんをつめてもらって
自転車で出かけていったのは、
しげるくんという、
その年広島の中学校に合格して元気に通っていた少年でした。
おかあさんのしげこさんは
原爆で死んだしげるくんのことは
「思い出すのがつらいけえ」
ずっと話さずにいたといいます。
けれども、
「それだけじゃいけませんよのう。
原爆が一つでもあるかぎり、平和じゃないですけえのう
と思い直して
古い日記や写真や手紙をだしながら
作者に話してくれた話を書いたものです。
たくさんの死体から、わが子の姿をさぐりあてた
おかあさんのしげこさんの気持ちを思ったとき、
この話を本にしようと決心した、と
あとがきにあります。
1944年ごろの広島のふつうの人たちの毎日のくらしも
生き生きと描かれているので
「こんなささやかなくらしを、まじめに生きる人の命を、奪うとは。」
という感情をかきたてられます。