「びっくり」や「シビアな決断」だらけの毎日 『がんばれヘンリーくん』

町ですごくやせてあばら骨がすけて見えるけどかわいい犬に会った。
どうする?

ずうっと前から、犬がほしい犬がほしいと思っていたんだから
その犬を飼うことにしたい!
でも今はバスに乗らないと家に帰れない町にいる。
どうする?

バスに犬を乗せるには、箱に入れればいいらしい。
どうする?

グッピーをひとつがい買って世話していたら
いつの間にかどんどん増えて、
家中のビン全部がグッピー用になって
えさやりで昼までかかるほどになった。
どうする?

友だちのサッカーボールをなくしたから
代わりのボールを買って返さなくちゃ。
ボールの代金13ドル95セント稼がなくちゃ、と思っているところへ
隣りのおじさんが釣りのエサになるミミズを
1匹1セントで買ってくれると言う。
1395匹のミミズをとればボールが買える!
どうする?

思い出せば子どものころは
こんなふうに毎日、あるいは一日のうち何度も
こんな選択を迫られていた気がする。
それは子ども心に、どれもこれもがシビアーな選択。

最高にかわいがっている犬アバラーさえも、
ドッグショーに出て新聞に写真が載ったことから
ある日、どうやら元の飼い主らしい年上の少年が
取り戻しにやって来た。

がりがりにやせて、きたなかったアバラーを
〈「アバラー」とは、あばら骨がすけて見えるからつけた名だ。
松岡享子さんの名訳ですね。原書では何という言葉なのかな?〉
1年間、首輪を買って、
鑑札をつけてやって、
お皿も買ってやり、
毎週馬肉を1キロ買ってやり、
ドッグショーをやった会社のワンワンドッグフードも買ってるし、
洗ったりブラシをかけたり、
なによりいつもいっしょにいてかわいがってきた!

アバラーは元の飼い主のところへ返さなくちゃならないのか?

今生きていれば102歳になろうかという
アメリカの元児童図書館員の作家ベバリイ・クリアリーによって書かれた
いかにも、きょうもあしたも子どもの世界で起こりそうな
おもしろい出来事をそのまま描いたおはなしです。

おとなも自然と、「どうする?」の選択に心を躍らせながら
どんどん読み進んでいきます。

表紙のはればれしたヘンリーくんは
アバラー(じゅうぶん大きな体)を
ヘアトニックのお徳用大型ビンの空き箱に入れて
意気揚々とバスに乗ろうとしているところ。
そうは問屋がおろさない、ってことになるのも知らず・・・

登場するおとなたちも子どもたちも、
究極のところで、ヘンリーくんを温かく応援してくれます。
人はいっしょうけんめいに生きていると
そのことが(宗教に関係なく)神様にもまわりの人たちにも
しみとおって伝わっていくんだな。

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