表紙に字が何も書いてない。
シンプルなイラストだけ。
奥付けを見ると、
「本書のカバーは活版印刷のためひとつひとつの表情が微妙に異なります。・・・」とある。
装丁はパピエラボ。
著者であるパピエラボの仕事を紹介している本なのです。
パピエラボは、2007年に始まった紙と活版印刷の窓口を併せ持つ店。
便利なものが巷にあふれ、物はお金を出せばなんだって手にはいる時代に、
少し遠回りしてみるのもいい、と思う人たちに向くものを
作り出しているようです。
長年印刷所や活字店を続けてきた人たちの仕事場や人柄が
紹介されるページもある
どの人も、気負いのない態度で淡々と仕事に向き合っているように見えます。
無論、滅びゆくものというレッテルが貼られた時代を
通り過ぎてきた傷跡も背負っているはずだから
それを飲み込んだうえでの気負いなさなのだ。なおさら偉いと思います。
オリジナルアイテム紹介ページを見ると、
ちょっとざらっとした手ざわりのこの本の紙に印刷されると
より映えるものたちが並んでいます。
メンバー3人が出会ったのは、「活版再生展」。
「活版再生展」は、ノンフィクションライター・大平一枝さんが書いた
『かみさま』が縁で開かれたそうで、
大平さんの文章も本書にコラムとしてのっている。
人の手の痕跡が残る紙に書かれたものは、
人の心の深いところに刻まれる、とある。
紙と活版印刷を愛し作り出す動きは、
メールやSNS一色に見える世の中にあって
決して消えることのない力強い動きだ。
「活版印刷だから良い」のではなく、「良いと思ったものが活版印刷だった」
というふうでありたい、と
あくまで冷静に良きものを追求する姿勢も印象的です。