心がこもったおひなさま 『三月ひなのつき』

おひなさまを飾るなら、豪華なおひなさまがいい?
それとも手作りの質素なのがいい?
手作りがいい、って答える人が案外多いんじゃないかと思います。

大きくて値段の高いおひなさまももちろんいいですが。
飾られたおひなさまのお部屋で
家族や友だちどうしや近所の人どうし、
仲良く過ごすことが、いちばんだいじなのでしょう。

おととしの3月3日、よし子のお父さんは亡くなりました。

よし子とおかあさんの二人暮らしの家にあるのは
どういうおひなさまでしょう。
はじめは、おかあさんがお友だちに教えてもらって折った
おり紙のひな。
そしてその次は?

おかあさんが洋裁の仕事でお金を稼ぐようになって
上等なおひなさまを買おうと
デパートで選ぼうとする二人ですが、
けっきょく、買うのをやめました。
なぜかな?

実は、おかあさんは、むかし隣りに住んでいた人形作りのおじいさんが
気持ちをこめて作ってくれたおひなさまを持っていました。
そのおひなさまは、昭和20年5月26日の空襲で焼けてしまったのでした。
おひなさまを飾って見るたび、
ひとつひとつのお人形にこめられたおじいさんの気持ちを思って
育ってきたおかあさんでした。

おひなさまにかぎらず、身の回りにあるいろんなものを
そういう思いで使ったり見たりできると
物をやさしく扱って、おだやかにくらせるんじゃないかと思います。

豪華なおひなさまでなく、二人が選んだおひなさまとは?

絵は朝倉摂さんです。

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