おとな流に読める児童文学はたくさんありますが、
これも、とくに疲れたおとなにおすすめだと思います。
それぞれ違う生き物だけど、
それぞれの生き方で生きて、死んでいく。
何千年も前からそうやって生きてきた生き物たち。
農家の納屋でのくらし。
堆肥のにおい。
入り口にかかるクモの巣。
「実を言うと、わたしは衰弱してきてるんだと思うの」
って言うのは、ある生き物が自分の生を言ったことば。
生死にかかわる重大なことだけど、
同時にそれは、あたりまえのこと。
動物たちの毎日が描かれるファンタジーなんだけど、
人間という生き物として生きる自分に
置き換えて思うところが、たくさんたくさん隠れている物語です。
タイトルのシャーロットって誰?
それは、物語が始まって間もなく判明します。
まず、表紙をよくよく見つめるとわかる人もいるかも?
そして、シャーロットのおくりものって何?
この世でいちばんすばらしいものなのに、気づかないもの。
悲しいことがあったときや、
友だちがいない辛さに、
堆肥に身を投げ出して泣くウィルバーの姿なんか、
ほんとに、そんなふうに泣きたい気持ちでいっぱいになります。
このお話を読んでいると、おとなも子どもも、
こういうふうにして涙を何回流すかで、
それだけやさしくなっていくんだ・・
と、思わずにいられません。
ファンタジックな、動物と人間のお話として
四季の移ろいを感じつつ楽しく読めます。
そして、悩んだときに思い出されて
力になってくれるのでしょう。
辛いことがあったおとなと子どもには、
静かな生きる勇気をくれるお話です。
1952年の初版以来19か国で読まれているロングセラーだそうです。
19か国って、むしろ少ない気がする・・
挿絵は『しろいうさぎとくろいうさぎ』の人。