「悲しいことがあると
開く革の表紙・・・・」
ではないですが、
季節がうつろうと取り出す書物
ってありませんか?
久保田万太郎の俳句集
って、わたしにとってそういう書物のひとつです。
生きているときは、毀誉褒貶あった人らしいですが、
その作品は、今もわたしたちの心に
さびしいような昔恋しいような感情を持ってきます。
わたしにとっては、一時期、東京の根津に住んでいたころ、
浅草や入谷や根岸をよく歩いたので
そのころの思い出と相まっているな~
と感じます。
おりおりの俳句や短文や小説を読むと、
古い時代の東京下町に暮らした人たちの
息づかいが甦ってくるようで、
想像をかきたてられるのです。
静かで慎ましくて身の程をわきまえていて・・
っていうんでしょうか。
そういう暮らしぶりを、忘れないでいたいな、
という感情とともに。
梅が咲くころの久保田万太郎俳句ひとつ。
長火鉢抽斗かたく春の雪
当時の役者さんや地方さんたちの消息も出てくるので
そんな興味も手伝っています。
(實川延若、毎日演劇賞をうく)
火をふいて灰まひたたす余寒かな
こんなことを考えていると
「もっと古本市に行きたいな~」
という気持ちがにわかに高まってきます。
金曜土曜に労働していると、
なかなか神保町の古書展にも行かれないし~
人生はそんなふうにして過ぎていくのであった・・・
っていう実感です。
『現代俳句文学全集 久保田万太郎』の装丁