まちがいなくとくべつなモルモットがいました。
オルガっていう名前です。
ペットショップで暮らしていたけど、
ある日突然にそこを出て新しい家に行くことになります。
オルガっていう名前があるのに
違う名前をつけられそうになったから
そんなのいや! と思い
なんとかして「あたしの名前はオルガ!」
ってわからせようと考えて、実行しました。
モルモットだってそれくらいのことできるんだから・・
そして「オルガ・ダ・ポルガ」っていう名前をつけてもらうことに成功します。
・・・そんな感じで始まる、モルモット・オルガの物語です。
モルモットにしっぽがない、って
飼ったことがない人は知らないかも。
ネコのノエルに
「しっぽがない」ってばかにされそうになったとき、
モルモットになんでしっぽがないか、教えてあげましょうか?
っていうわけで、
モルモット史上特筆すべき
一大事件にかかわる壮大な物語を語ることになるのです。
「むかしむかし・・・」
このうえなくすてきだったしっぽを
モルモットがどうしてなくしてしまったのかが
解き明かされます・・・
そこには、ある美しいお姫さまと王子さまと、
切り立ったがけの上に建っていて
だれも登っていくことのできなかったお城が
出てきます。
オルガはカレンちゃんという女の子の家で
モルモットが住みやすいように工夫された小屋で生活することになりますが
もくじを見るとわかるように
快適なことや鼻高々なこともたくさんあるかわりに、
恐ろしいこと、悔しいこと、悩むこと、困ったことも
たくさんたくさん起こります。
モルモットの病院にかつぎこまれることさえあります。
オルガはあるとき
行方不明になったあと自分の小屋にたどりついて
カレンちゃんにぎゅっとだきしめてもらい
「家に帰るのはしみじみいいものだ」と思ううちに
「たくさん食べて、少しだけ考える」という
モルモット一流の哲学を編み出します。
しかも、モルモットコンテストに出場して
名誉なような名誉じゃないような微妙な名前の賞をもらいます。
なんという賞だと思いますか?
次々に起こる事件に、オルガがいっしょうけんめいに立ち向かうので
そのなりゆきが知りたくて
またあるときは、自分もオルガといっしょに
外の世界をびしょぬれで必死に走り回っている気がして
ずんずん読んでいるうちに
物語は終わりに近づいていきます。
作者のマイケル・ボンドさんが
モルモットをだいている写真が裏表紙に載っています。
オルガや友だちの動物たち、
飼い主さんたち、町の人たちはきっと
みんなマイケルさんの町に住んでいた動物や人です。
きっと、マイケルさんの町で起こった出来事は
このお話の中の出来事とそっくりなのにちがいありません。
「くまのパディントン」の作者であるマイケルさんの心を通すと
動物たち人間たちの毎日がこんなにも楽しそうなものに
なるんだな、と感じます。
「パディントンに町で出会っても驚かないでしょう」っていう言葉を
読みました。
その感性が動物たちに強すぎないキャラクターを与え
人間と動物が一緒に暮らすことが
楽しい自然なことに感じられるんじゃないでしょうか。
マイケルさんは戦争中は空軍陸軍に入隊していたとのこと。
昨年亡くなったときはSNS上にも追悼のコメントがあふれたそうです。