動物や草花と身近で暮らす大人が子どもたちに語るお話 『ラベンダーのくつ』

メンドリとウサギとノネズミが
干し草で作った家でいっしょに暮らしたら
どんな暮らしかな?

メンドリたちにもうるさいのとおとなしいのがいるから
このおとなしいメンドリはどこかよそへ行って
静かに暮らしたいと思うだろうな。

キツネがメンドリを食べようとしてねらっているけど
メンドリをだましてさそいだすのに
頭を使っているのかな。

アリソン・アトリーの短編集は、
動物や草花と身近に暮らす大人が子どもたちに語るお話です。
動物のなまえや草花のなまえが
細やかに語られて
毎日見てさわっている草や花が
動物たちと織りなす姿が
人間も動物の一員なんだと感じさせてくれます。

動物たちは人間の目をとおして生き生きと暮らしています。
キツネの家のお手伝いさんになることになったメンドリが
キツネの家に行くしたくをする様子など
「なるほどなるほど」と思います。
持っていく物は、
ねまきとブラシと、くびにまくスカーフをよぶんに1まいで
小さなふくろにつめてでかけるんですから。
メンドリのまじめできちんとした性格が描かれているのです。

キツネはもともとメンドリを食べるつもりでしたから
メンドリがそれに気づく日がくるはず。
きっかけは、ろばたに落ちていたキジの羽と
にわにあったホロホロチョウの羽。
「どうしてだろう?」
メンドリは、キツネを真面目な菜食主義者で
そんなものは食べないと信じ込んでいたのです。
ところがそうではないらしい。
そう考えると不審な点が思い当たる。
キツネが読んでいる本を開いてみると
「うまいことをいってメンドリをさそいだすには」と
書いてあるページを見つけました。

ああ、動物たちの世界で起こりそうなことの想像が
果てしなく広がっていきます。

表題の「ラベンダーのくつ」とは
メンドリがキツネの3びきの子どもたちに話してやる
シンデレラが、お話の中ではいていたくつです。
話にすっかり夢中になった子ギツネたちがせがむので
メンドリが作ってやった
ラベンダーの花で作ったいいにおいのする12このくつです。

子ギツネたちはこれをはいていたので
オオカミに食べられることもなく
それからもメンドリに
「ねむりひめ」とか「長ぐつをはいたネコ」のお話をしてもらいます。

フクロウがホーホーと鳴いて、
おばけたちがゆらゆらと来て
いっしょにお話を聞いているようです。

いっしょに読みたい
『ちいさな木ぼりのおひゃくしょうさん』