8月6日の夕方、くすのきの下で 『かあさんのうた』

8月6日の夕方、作者はもんぺをはいた女学生として
広島近くの村にいました。
そして、町から狂人のように泣き叫びながら逃げてきた
一人の母さんを見ました。
燃える町の中で、ぼうやとはぐれてしまったのです。

作者の大野允子さんが、
今も道のほとりに立っているの見るたび、
「この木は、なんもかんも、知ってるんだな」と
ため息を吐くという、樹齢何百年もの巨大なくすのき。
その下で、あの日起こったであろう
数多くのできごとの中のひとつのおはなしです。

大野さんの作品の中で
いちばん短いのに、いちばん多くの人に読まれてきた気がするという
『かあさんのうた』

「うた」とは、
くすのきによりかかった女学生が
まいごのぼうやをだいてうたった子守唄でした。

くすのきは、
「ぼうや、よかったな。
かあさんに、だかれて・・・いいな。」
と言いながら、からだをふるわせていました。
「かわいそうな、ちいさな 親子・・・。」

朝が来て、くすのきは、
自分によりかかっているちいさな親子が
まるで生きているように
金色の日の光にてらされているのを見ました。

くすのきは、目をつむれば
あのうたが聞こえてくるような気がして
今もくろぐろとした大きな影を夜空に投げて
そこに立っています。

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