他の人が悲しんでいるのを見るのがきらいな・・ 『木馬のぼうけん旅行』

この本を読み終わって、パタンと裏表紙を閉じたとき、
ひとりでに
「おもしろい。
・・・しかも、勇気づけられ、心あたたまる。」
と つぶやきました。

木馬のぼうけん旅行 (福音館文庫 物語)
木馬が生きて冒険するって、幼い子の絵本の世界だ、
と思うと、そうじゃない!!!

木馬はいつかあなたとわたし自身です。

他の人が悲しんでいるのを見るのがきらいで、
行く先々で良き縁を結び、
その縁に助けられていきます。

そもそも木馬は、
いつまでもいつまでもいっしょにいたい、と思うご主人と
離れ離れになってしまいます。
ご主人とはおもちゃづくりのおじさん。
木で一つ一つ心をこめておもちゃを作っている人。
それまで、村々 町々で心待ちにされていたおもちゃが
あるときから売れなくなっていきます。
安いおもちゃが町で売られるようになったからです。

お金がなくなって
いっしょに暮らす木馬が、
おじさんを助けようと働くのです。
はじめあざ笑っていたお百姓たちも
いっしょうけんめいな木馬の姿を見て
笑うのをやめます。
炭鉱で働いて目が見えなくなり
死んだほうがいいと思ったとき、
「きれいな木馬!」
と言ってくれる子どもに出会い、
もう少し死なないでいよう、と思い直します。

見知らぬ小さな木馬として
馬が一頭足りなくなった王様の馬車の列に加わったり
困っている鍛冶屋さんのために薪を集めてきたり
そこにいる人々を助けて喜ばれることを重ねていきます。

いつも、のぞみは故郷に帰ってご主人といっしょにいることだけ、
という気持ちで、
「ただの小さなおとなしい木馬です。」
と言っている。

それでも、何か せとぎわのときには、いつでも
どうするといいのか  よくよく考えてから行動しています。

そして、運が悪いときには
少しでも良かったことを考えて
これでも運が良かったんだ、と思っている。
海で死にそうになったとき、
ぼくは馬として死ぬんだ、と
誇りを捨てない。
だいじなことの前ではへんに焦らない。

人々の中にも
流行おくれだと言いながらも木馬を直してくれたり
買ってくれたりする人がいる。
ほんとにいいもの、心のこもったものの力を
感じ取ることができる人がいる。

ご主人・ピーダーおじさんと再会できるかどうか、
読んでみてほしいです。
ちょっと意外な結末なのです。

おわりのほうで木馬が
人のために働けるのはなんといううれしいことだろう、
と言っています。

子ども向けの本だと思って読み始めても
木馬はいつか読者自身になっています。

大人こそ、児童文学を読むといいです。
毎日を生きるためには、
こまごまとしたノウハウも 不要だとは言いませんが
それらをみんな含めた、考え方の真髄みたいなものが
子どもの本の中にはあふれています。

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